日本のジャズ・ギター界は、世界的に見ても最高水準である。 J−ジャズ・シーンにおけるギター の歴史と今を、愛と嫉妬を込めて研究していますー(笑)。  60年代から、現代までの日本のトップ・ギタリスト33人が登場します。 ギター・サウンドの叫びと囁きー!

天ヶ瀬 悠(^^♪

Author:天ヶ瀬 悠(^^♪
                                                       ジャズ・コラムニスト、音楽プロモーター
ミュージシャン(Gt)

様々な媒体で、Jージャズについて、現場サイドから今の声を発信している。

特にギター・サウンドについての造詣が深く、日本のジャズ・ギタリストのアルバムを、60年代から現代にいたるまで幅広く収集。

その豊富な知識と、鋭い舌鋒、お笑いを交えた軽妙洒脱な語りで、ギター・フリーク達のカリスマ(自称)。

本人は、「あにき」と呼ばれたがっているが、業界では、あーさんとか、あのおっさんとか呼ばれている。

ギターの腕前についてですかー? それだけは聞かないでくださいよー(笑)。


<天ヶ瀬 悠 自己採点表>

夜の街出没度  ★★★★★
ビートたけし度  ★★★★
インテリやくざ度  ★★★
なかなかの商売人度 ★★★
一流ミュージシャン度 ☆


-天気予報コム- -FC2-

日本のジャズ変人 大集合!                                                            

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                                       (けっこう笑えます。ただしお暇な時に).


■ PROFILE 

◎ 以下敬称略

あだちくみ 1978年(昭和53)生まれ 大阪泉州市出身
11歳(小学5年生)からギターを始め、約5年間ひたすらブルースを耳コピーする。
19歳でロサンジェルスの音楽学校MIに留学。スコット・ヘンダーソン、アレン・ハインズに師事。
帰国後、吉本興業のヒップホップ・ユニットのバックなどを務めながら、自身のバンドでも活躍。

2007年、ドラムの則竹裕之(元 T-スクエアー)と、バンド「安達久美・クラブパンゲア」を結成し、メジャー・デビュー。

2007年  「リトルウイング」   (ビデオアーツ)
2008年  「ウイナーズ!」    (ビデオアーツ)


日本で初の本格的な女性ギタリスト。(このキャッチコピーのニュアンスで雑誌などに紹介される。ちょっと寒いような表現ですが、まぁ、確かにその通りです)

ジミヘン、ジェフ・ベック、レッド・ツェッペリンなどのロック・インストの王道をルーツにし、ウェザー・リポート、エレクトリック・マイルスなどを加味したオリジナル曲のフュージョン路線で、一躍人気者になる。(これってある意味、おやじ世代テイストなんですよねー笑)

いわゆるストレートなジャズは全くしないにも関わらず、ジャズ雑誌に取り上げられ、レコード店の売り場もジャズ・コーナーにある。
セクシーなキャミソール姿でロックを弾いていても、その容姿に似合わず(?)、不思議と知的でジャズの香りもする、今をときめく「だんじり女神」である。




安達久美2




ー70年代ロックとフュージョンの自然な融合ー

小学校5年生でギターを始めた時から、ブルースを耳コピしていたそうである。
(兄の影響だそうだが、チャーも兄の影響で小学生の時からクラプトンをコピーしていた)
小学生の女の子が、ひたすらバディ・ガイ、BB・キング、クラプトンをコピーしていたのである。

この年代(要するに子供時代)に、どっぷりブルースに浸っていたというだけあって、前出の2作を聴いてみるとフィーリングの基本に大きくブルースが聴こえる。
フレーズのルーツは、ブルースにあり、サウンドのルーツはどうやら70年代ロックにありそうだ。

あるレコード売り場のCD紹介のポップに、女性ジェフ・ベックと書いてあったし、雑誌でもそのキャッチ・コピーを何回か見た。
僕も最初に聴いた時、そのロック・インストのイメージから、ついジェフ・ベックを連想してしまった。
しかし、実は本人に言わせれば、もちろん60年代の代表選手ジミヘンには多大な影響を受けているが、ジェフ・ベックは特別には意識したことはないし、コピーもしたことはないそうである。

じっくりと聴きこんでみれば、確かに安達久美のフレーズはもっと歌っぽい、つまり根底に歌うようなブルースが聴こえる。どちらかと言えば、やはりジミヘンだと思う。
だんじりお囃子をルーツに持つ浪花のレディ・ギタリストは、やはりブルースなのだー(笑)。


サウンド的には、エレクトリック・マイルス(75年まで)、ウェザー・リポートの匂いも結構する。
本人自身が、フェバリットでウェザー・リポートを挙げていたが、何回かCDを聴いた後、それを読んで、彼女の音楽的世界観によく納得できた。

(僕は予備知識を持たないで、音楽を聴くことを信条としている。だから、雑誌、ライナー・ノートの類は、CDを聴く前には絶対に読まない。先入観なしに何度も聴き込み、自分なりに掴まえたと思った後、初めてパラパラと読み始める)

安達久美の特徴は、ロック、ブルースのコテコテ王道フレーズと、フュージョン系のスマートなフレーズとが、まったくごく自然に、自身の音楽性に溶け込んでいることにある。
この自然さが、なんとも非凡である。

20代前半のロック青少年から、団塊おやじまで、幅広くその感性にフィットするのもここら辺りにありそうだ。


ただ安達久美のギター・スタイルは、ひとつのスタイルに定義はできない。
その多彩なオリジナルの曲ごとに、ベストなスタイルに合わせて切り替えていく器用さがある。
何よりも素晴らしいのは、まず初めに「曲」ありきなのだ。

ジミヘンから、サンタナから、スコット・ヘンダーソンから、ウェザー・リポートから、マイク・スターンから、パット・メセニーまで、あくまでオリジナル曲に合わせて自然に使い分けるような感覚がある。
だから、彼女のライヴでも、アルバムでも聴いていて飽きない。
そして、使い分けているけれど、ある統一された確かな匂いがある。

彼女が単なる「女の子」のギター弾きでなく、卓越したミュージシャンであることを、この曲重視の姿勢が何よりも表していると思う。
彼女がギター弾き以上の何かであるということを、ファンは直感的に感じ取っているのだ。
(僕は本来、自分に甘く、他人に厳しい。そんな辛口の僕にしては、めずらしく誉め過ぎました。女の子だからと言って、決して贔屓した訳ではありません。因みに僕のアイドルは倖田来未です。関係ないかー笑)




安達久美3




ー基本路線は自作のオリジナル曲ー

シーンに登場して来た最初から今まで、やたら女の子の弾くジミヘン風ギター、ジェフ・ベック風ギターなどと話題になるが、ズバリここで言えば、彼女の最高の資質は作曲にあると思う。

出身の大阪泉州市は、岸和田と並ぶだんじりのメッカである。もともと19歳の時に、家の外から聴こえてくるだんじりのお囃子の合わせて、ギターを弾きながら曲を創ったのが最初の作曲のきっかけだそうである。
因みにそれが、ファーストアルバム収録の「Danjiri Funk」である。(日本のジャズ・フュージョンの長い歴史の中、だんじりと言う言葉がタイトルに付けられたのは、おそらく初めてでしょうねー笑)

それから場面や景色を、楽曲で表すことに夢中になった。まず紙に物語を書きイメージを発展させる。
物語だから、それに伴って情景も変化する。風景の見える曲が何よりも作曲のコンセプトである。その様々な情景の変化に応じるため、自然と起伏に富んだ曲になる。

とにかく曲が複雑に展開するのだ。頭の中で違ったイメージが次々と湧いて来るのだろう、拍子や速度が変わる変則的な構造の曲が実に多い。

日常的に曲創りはやっていて、中にはギター不要の曲もあるらしいー(笑)。そういった曲は、楽曲提供という形でいつか披露したいとのことだ。

曲創りはメロディー先行なので、まずそれを打ち込む。上からドラム・パターン、ベース・ラインを重ねて打ち込みながら、アレンジを創って行く。
その時に色々とリズム・パターンを変化させ、曲を展開させていくのだ。
(エレクトリック・マイルスの真髄は何か? それはリズムのコントラストの妙味である)

だから曲創りの基本的な軸に、リズムの変化がある。リズムのトリックが大好きだそうだから、当然ポリリズム(複合リズム)の曲も多くなる。

本質的に、ドラマー好みのミュージシャンなのである。
それが彼女の運命を拓く。

彼女がまだアマチュア時代に、元T−スクエアのドラムの則竹裕之が、とあるライヴ

ハウスでこの複雑な曲を聴いた。
「良かったら、譜面を見せて貰えませんか?」
「譜面はないんです。私、楽譜が読めないんで」
「えっ、こんな複雑な曲で!」

これが、伝説となっている安達久美と則竹の出会いで、クラブパンゲア結成のきっかけである。
プロデューサー則竹が最初にキャッチしたのは、この曲の複雑さであることは特筆に価する。




則竹裕之(右端)




ー則竹裕之はやっぱ凄いわ!−

ちょっと余談になるが、クラブパンゲアについて少々。

ミュージシャン安達久美は、このドラムの則竹裕之と出会ったからこそ世に出た。
彼が発見したからこそ、メジャーに上がれたことは紛れもない事実である。

いずれにしても則竹は、見事なプロデューサー振りを発揮している。
女の子のギター弾きという話題性と、ロックスター的な派手さを持った安達久美をフロントに据え、ベテランの自分とベースの清水興はバックに回りつつ、がっちりと自身のポジションをキープしている。
見事な猿回し振りである、あっ、しまった、つい、口が滑った、済みません、言い直します、見事な映画監督振りであるー(笑)。そう、映画監督と女優なのである。

安達久美もなかなかの商売人であるが、則竹は辣腕ビジネスマンである。
(だいたいがミュージシャンというより、ブランドスーツを着た今風の高級サラリーマンの風貌じゃないですかー笑)
プロデューサー則竹が、安達久美という浪花のあきんどを上手に看板にして、クラブパンゲアは一気に最前線に躍り出た。つまり売れたのである。(あっ、これ、褒めているんですよ、商売人とは褒め言葉ですー笑)


もちろんテクニック的には、絶対にグルーブが乱れないし、曲を実に上手く演出するし、さらにドラミングの時代の最先端をよく知っている。とにかく頭がいい。
もしも、凡庸なドラマーだったら、安達久美の創る複雑な曲は、崩壊しているかも知れない。

ライヴに於いても、後ろで太鼓を叩きながら、見事に女の子のギタリストを踊らせている。(盆踊りみたいな言い方になりましたがー笑)
要するに、安達久美というスター創りは、敏腕プロデユーサー則竹にしかできなかった偉業と言えるのだ。


ぶらりと立ち寄ったCDショップで、ベースがあの浪花エキスプレスの清水興であるのを、CDのクレジットから発見した時は驚いた。
最初に安達久美のアルバムを買った動機は、日本屈指のグルーヴ・ベーシスト清水興の名前であったことを白状しますー(笑)。
ファンキー・グルーヴ・ベースでは、彼の右に出るものはいない。現在、山口武と「URTRA TORIO」も組んでいる名実ともに貫禄十分の第一人者である。

56年生まれのこの大ベテランが、ぽっと出のギターの女の子と組んでいる、いったいこの子は誰なんだ?という抑えがたい興味からCDを買ってしまった。

キーボードは、今現在もT−スクエアの河野啓三で固める。デビュー前の新人の周りに、よくぞこれだけ集まったものであると感心する。非常に戦略的である。
これは、則竹裕之のプロデューサー的求心力であると見た。




特注のストラップ




ー70年代の名曲を、アルバムに1曲だけカヴァーー

デビュウー・アルバムの「リトルウイング」とは、もちろんジミヘンの名曲である。
か細い女の子のギタリストが、このウッドストック時代の名曲をカヴァーし、アルバム・タイトルにしていることで、往年のロック・ファンは、おっと思ったことだろう。(そう言うとたぶん本人は嫌がると思うが、まぁ、事実である。ただし女の子と言っても、もう30歳であるがー笑)

さらに、セカンド・アルバム「ウィナーズ!」では、なんとあの「哀愁のヨーロッパ」をカヴァーしている。
最初、CDショップで、「サンタナの哀愁のヨーロッパを収録!」というキャッチコピーを見た時は、えっと思い、その後、思わず微笑んでしまった。なかなか露骨に、いや、ストレートにやるもんである。さすが大阪のお方であるー(笑)。


本人によると、60年代後半から70年代のロックが自身のルーツにあり、それを大事にしたいらしい。
憧れのミュージシャンの名曲をカヴァーすることで、その憧れを今度は自らのものとして体現したいということなのだろう。
「目指しているのは世界一なので、そこを通らないと目標には到達できない気がするんです」と、ごく普通の口調で語っているので驚いた。(その心意気は買った!)

自分より下の世代は、これらの名曲を知らないので、それを伝えて行きたいとの気持ちもあるらしい。(なかなかのあねご肌ですね)。
これからもオリジナル曲を中心にした上で、このような名曲カヴァー路線は続けるそうである。


ストレート・アヘッドなジャズもそれなりの素養はあるらしい。ウエスや、ジム・ホールや、ジョー・パスや、グラント・グリーンなども、けっこうコピーしていたらしい。
もしかしたら名曲カヴァー路線で、いつかジャズを取り上げるかも知れないとのことだ。

CD購入の基本的な動機は、好奇心である。次に何をやるか?と、好奇心がくすぐられるからこそ、ついつい買ってしまうのだ。
売れ続けているミュージシャンは、例外なく好奇心をくすぐるミュージシャンである。
(その最もたる人物は、もちろんマイルス・デイヴィスである。次にいったいどんなカードを出してくるのか、という期待感に生涯包まれていた)

安達久美のCD販売のキャッチコピーで、「枯葉を収録!」とあれば、いかに月末で金欠状態であれ、これは買わずにはいられません。(いくらなんでもこれはないでしょうがー笑)

僕は彼女を、天性の浪花のあきんどと見た。いつかきっと、あっと驚くほどオーソドックスなジャズ・スタンダードを収録して、「おじドル」の地位を、さらに不動のものにするのではないかと、密かに期待しているー(笑)。


彼女には、小さい体を吹き飛ばすようなパワーが溢れ出ている。
ステージに駆け上がり、安達久美と大書きされた派手なストラップを、パッと景気よく肩に掛ける。
ロックスターのかっこ良さ十分である。(このストラップのセンスは、もう殆ど暴走族であるー笑)
そのパワーが、音の説得力になってシーンを駆け巡っている。

ジャズ・フージョン界に、大いなる元気をくれた彼女の出現の意義は大きい。




安達久美1




追伸ーアルバム「ウイナーズ!」のジャケットに安達久美の胸の谷間がくっきり映っている。
様々な雑誌にも、キャミソール姿で胸の谷間をやたら見せて登場する。

以下は参考までに、それにまつわる巷の賛否両論の声をまとめた。

(1) 目立ってなんぼなんだから、キャミソールでも谷間でも何でもいいじゃないか。売れたんだから、それでいいじゃないかー。

(2) ジャズ・フュージョン畑であれはいかんな。下着姿に谷間の露出はいかん。個性の表現は音楽でやりましょう。「音」で勝負しろ。

(3) 隠してもはみ出してしまう自然派なら、むしろ積極的に容認する。しかし無理に誇張しちゃいかんわー(爆笑)。

因みに、不肖・天ヶ瀬 は、(3)に清き一票を投じます。



作曲才能度   ★★★★★
暴走族度     ★★★★
叶美香度     ☆


2008年 春



■ PROFILE 

◎ 以下敬称略

かんの よしたか 1972年 (昭和47年)生まれ A型
岩手県出身で、20歳の時に上京。
潮先郁男に約5年ほど師事した後、1998年、当時の若手ジャズメンを特集したCDアルバム、「ジャズ新撰組」でデビューする。

2003年  「INTRODUCING」   (what's Neu Records)
2005年  「MOVEMENT」    (what's Neu Records)

アーチトップ・ギターで、フォービートにこだわり、ジャズの王道を堂々と歩む、シャイだが、なかなか気骨のある東北の心優しきチャップリン。




管野




ーメイク・サウンドの魅力ー

ギターの楽器としての魅力は、多岐にわたる。
その中でも僕は、音色が違うということが最大の魅力だと思う。

仮にトランペットの音は、もちろん微妙に、それぞれ各人によって違うのだが、マイルス・デイヴィスか、フレディー・ハバードか、音色だけではなかなかブラインドでは分からない。
(もちろんその道の達人ですぐに分かる人もいるだろうが。しかし、そういった人は少数派である)

だが、ギター・サウンドは違う。
それぞれのプレイヤーによって、音色がまったく違う。
そして、音色が創造的に作れる唯一の楽器である。ミュージシャンにとって、これほどメイク・サウンドが出来る楽器は他にない。
ギターに於いては、音色自体が、最も存在感を持った個性なのだ。

どのギターを使用するか、ということが、そのミュージシャンの音楽的姿勢を如実に表す。
グラント・グリーンは、ギブソン330・シングルコイル・ピックアップのあの硬く乾いたトーンだからこそ、あのファンキーさが際立つのであり、ジム・ホールは、ダキストのあの柔らかく甘いトーンだからこそ、知的な洗練された都会風のジャズ・フィーリングが表出される。

ケニー・バレルの代表作、「ミッドナイト・ブルー」のまさに真夜中のあのブルージィーな雰囲気は、堅さと柔らかさがない交ぜになったギブソン・スーパー400特有のビター&スイートな深い音だからこそ醸し出されたと言える。


さて、菅野義孝の「音」である。

初めて聴いた時は、何の知識も、先入観もなかったのだが、まず一聴して、その音色の素晴らしさに驚いた。
若手でこんな深いクリーン・トーンを出すのは、いったいどんな奴だ?と俄然、興味を持った。

72年生まれであるから、2003年の初リーダー作、「イントロデューシング」発表時点では、まだ30歳になったばかりである。
その5、6年前、つまり25、6歳から、ギブソン・スーパー400を使っていたというから、最初の時点で方向性として、まず「音」への希求があったのだろう。
(このギターはやたら大きい分、相当扱いが難しい)

一般に、20代のギタリストというのは、速弾き等の超絶技巧を追いかけるもんである。
しかし、菅野はギタリストとしての出発の時点から、クリーントーンの深みを追いかけ続けている。
ミュージシャンと言うのは、普通、方向性に迷うものである。
迷わないと言うことは、ひとつの才能である。


クリーンなトーンを綺麗に出そうと思ったら、一音、一音をより正確に、より丁寧に、ピッキングする事が求められる。
自然と音の「数」も減る。
一音の説得力を求めるのは、当然、速弾きとは逆の方向を向く。 
ここが、ギタリスト・菅野義孝の原点である。

(速弾きをしないから、盛り上がってきた時に派手な演奏が出来ない、最高潮になった時ほど、ロングトーンを一発、グィーンと伸ばしてしまうと語っていたー笑)

「音」のこだわりについて、菅野自身が語っていること。

愛器は、69年製のギブソン・スーパー400 。
      
ピックアップは、50年代製のディアルモンド1100G。音の特徴は、このディアルモンドのピックアップに負うところが大きい。                       

ブリッジは、木製のものに交換していて、材質は、ハカランダ。 これによって大きく音が変わったらしい。

アンプは、日本人のアンプビルダーの作品で、30ワットあるが、ツマミはヴォリームとトーンのふつだけのシンプルなもので、余計な回路がない分、シンプルで太い音がするとのこと。
「キッチン・テーブル・アンプリフィケーション」と言う台所みたいなユニークなネーミングのアンプであるー(笑)。




グラント・グリーン




ー追いかけているのはグラント・グリーンー

菅野の最も追い掛けているミュージシャンは、グラント・グリーンだそうである。
「ウエスはすご過ぎて参考にならない、だからグラント・グリーンです」と述べている。

(しかし、言わんとするところは実に良く分かる。グリーンは人間界の方ですが、ウエスは怪物ランドの黒い王子ですからねー笑)

グラント・グリーンはギタリストにとって、参考になり易い。フレーズが良く聴こえるのだ。シングル・ノートでコピーし易いフレーズが、次から次へと出てくる。
そして、そのフレーズがシンプルだが極めてジャジィーに響くのだ。

グリーンへの憧憬はかなり強いようだ。何曲か完全にコピーした曲があって、それをCDに合わせて、タイミング、強弱、色気、匂いまでピッタリと合うように練習するとのこと。(色気、匂いという表現は相当なもんです)
グリーンのようになりたい、瓜二つになりたい、という想いでギターを弾くらしい。


僕個人のことだが、グリーンのアルバム、「グリーン・ストリート」を初めて聴いた時は、ぶっ飛んだ。

ドラム&ベースが野太い音で真っ黒にズンズン響く中、P90シングルコイル・ピックアップの堅いシャープな音が、ジャズとは風合いが違う、どちらかと言えばR&Bにより近いフレーズで鳴り響く。

フレーズは、大いに歌いに歌っているけれども、流麗に流れるようないわゆるジャズ的なフレーズとはまったく違う。
シンプルだが、極めてジャジィーで真っ黒けに響くのである。
そして何よりファンキーである。

(リズム&ブルース風のフレーズを中心としながら、随所にチャーリー・パーカーの定番フレーズを、アクセントとして織り込んでいる。そのバランス感覚から、醸し出されるテイストは、やはりジャズなのだ)


菅野のフレーズは、非常にコード感のある、いわゆる流れのあるフレーズである。
まずここら辺りで、ペンタ一発で押しまくるような感のあるグリーンのテイストとはかなり違う。

そして、菅野のピッキングはややレガートのニュアンスで、グリーンのスタッカートの効いたピッキングとは微妙に違って聴こえる。
(このニュアンスの違いは、ピックアップの違いも大きいと思えるが)

要するに、菅野のスタイルは、いかに異端グリーンを追いかけていても、師匠の潮先郁男譲りのジャズギター正統派の大きな流れの内にあると言えるのではないか。
弟子はやはり師匠に似るもんですねー(笑)。特に彼は潮先先生を、心から尊敬しているようです。


グラント・グリーンは、後年のゴリゴリ・ファンキー路線に行く前のソウル・ジャズ時代でも、他の追随を許さないファンキーなノリがあった。
菅野のアルバムでは、一拍をえぐるようにタメにタメたあのグルーブ感がグイグイ迫って来る迫力は、グリーンほど強烈ではない。
東北の心優しきチャップリンは、控えめでソフトな人柄通り、どうも心底からコテコテ・ブーガルーにはなり切れないようだ。
しかし、それは、より「洗練」されているからだとも言える。その差こそが菅野の個性になっているのだ。

(ただ、2007年、スイートベイジル139で行われた、ジャズ・フェスティバル「華麗なる日本のジャズ・ギタリスト達」のラスト曲で、杉本喜代志、山口武と繰り広げた「モーニン」の熱演は、三人の中でも一番、ファンキー&ブルージィーであったことは、そっと付け加えて置きますねー笑)。

おそらく菅野にとってのグリーンは、63年「アイドル・モーメント」あたりから、麻薬でフラフラになる前の65年頃までではないか。ギターがL-7に変わった後からだと思う。
69年、復活後のファンク・ジャズ時代は彼の範疇外。「ライヴ・アット・ザ・ライトハウス」を持っていないと述べていた。
因みに僕にとってのグリーンは、61、62年頃の330によるソウル・ジャズ時代です。
さらに付け加えれば、小沼ようすけのグリーンは、レア・グルーヴ、ゴリゴリ・ファンキー路線の69年以降である。

セカンド・アルバム 「MOVEMENT」では、ニューヨークまで行って、オルガンのメルヴィン・ラインと共演している。メルヴィンはウエスの元相棒の大物である。
柔らかでウォームなタッチのメルヴィンが彼のアイドルらしいが、僕としては、グリーンの最強のコテコテ・コンビ、ファンキー・オルガンのベビーフェイス・ウイレットと言って欲しかったー(笑)。

グリーンのもうひとつの特徴は、もちろんあの真っ黒けなブルージィーさである。
現代のギタリストが、ブルーノートを必要以上に使えば、コンテンポラリーに馴染んだ耳には、なんとも野暮ったく響くだろう。
どうしてもモダンなフレーズを弾いてしまう。
ブルース曲以外で、あの真っ黒い世界に突入する蛮勇のギタリスト(笑)は、現代の日本では誰もいない。

要するに時代性なんだと言い切ってしまうには、その言葉だけでは収め切れない存在感がグリーンにはある。まさにヘタウマ、まさにヤボカッコイイであるー(笑)。
結局、それはオンリー・ワンという事なのだ。





菅野義孝2




ーひとつの音色、ふたつの音色ー

若くしてこの「音色」にこだわった姿勢は大いに評価したい。事実、日本で一番ジャズらしい綺麗な音だと思う。
まだ30歳を少し超えたばかりである。アーチトップでフォービートの王道を追いかけ続けるのか、どこかで何らかの転身があるのか興味がある。


個人的には、もし何らかの変化があるとするならば、ナイロン弦のガットギターにも挑戦して貰いたいような気がする。
単音弾きを中心にしたグリーンに比して、菅野はコードの引き出しが膨大だと直感した。
コード主体のアドリブだし、一音、一音、粒立ちのいい音を追いかけているから、ガットギターの指弾きが嵌まらないだろうかー。
真面目で実直なイメージから、ナイロン弦が良く似合うように思うのだが如何だろうか。(関係ないかー笑)
ファンキー&ブルージーより、ソフト&メロウーが本領かも知れません。
(指弾きの難しさは、ピックの比ではない。そこら辺りが最大の壁になりそうだが)

フルアコとガットの二本立てで、音楽の幅がグッと広がるだろう。
(アルバムを通してひとつだけの音は、リスナーにとって「飽き」の要因になる)

川崎燎も、渡辺香津美も、小沼ようすけもこの二本立てでやっているではないかー。
同じ世代の小沼ようすけは、ガットギターでその音楽的世界がどれだけ広がったことか。


まぁ、本人に言わせれば、ひとつの事だけを延々とやり続ける性格らしいから、フルアコだけに飽きるには、後30年は掛かるかも知れないがー(笑)。

より一層アコースティックな響きのガットギターでフォービートをやれば、その時こそグラント・グリーンの呪縛は純粋な憧れに変わり、新たなオンリーワンの菅野ワールドが生まれそうな勝手な妄想が湧くのだ。


音色のジャズ度  ★★★★★
きっといい人度  ★★★★
グラント・グリーン度  ★★


2008年 春
 
  




2008/05/19 12:43|伝統芸能 継承 組
(◇ 済みませんー、ニューヨークから帰国しだい、至急に執筆しますー泪)

2008/01/06 10:02|カテゴリー名 思案中TB:0
(◇ 済みませんー、ニューヨークから帰国しだい、至急に執筆しますー泪)

2008/01/06 09:34|カテゴリー名 思案中TB:0
(◇ 済みませんー、ニューヨークから帰国しだい、至急に執筆しますー泪)

(◇ 済みませんー、ニューヨークから帰国しだい、至急に執筆しますー泪)

                                                                                                                                                 

                                                ◆ もしご本人がご覧になっても、ライヴハウスで、いきなり後ろから怒鳴りつけたり、道でバッタリ遭った時、知らん顔して無視したりしないで下さいねー。ここはひとつ大人になって、軽く笑って済ませて下さいー(笑)。

新聞を取っていない方は必読です。

                                        (やはり新聞は取りましょうね)

当サイト訪問者は、ジャズが良く分かっていらっしゃるいい方ですね。                                         

                                      きっと、ギターも上手いと思いますー(笑)。

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